東京ヤクルトスワローズの本拠地であり聖地の明治神宮野球場。ヤクルトファンはもちろん、対戦相手のファンも集まります。
熱い応援とともに数々のドラマが生まれるこの場所ですが、ひとつ気になることがあります。それは「災害が起きたとき、私たちはどうすればいいのか?」ということ。
この球場の災害対策について、日本建築学会の研究論文から詳しい実態が明らかになりました。
本記事は、日本建築学会技術報告集第26巻第63号「プロ野球本拠地球場における災害対策の現状と課題」(2020年6月)の研究データを基に作成しました!
神宮球場の立地と地震のリスク
神宮球場が建つのは「更新世段丘」と呼ばれる地形で、比較的しっかりとした土地にあります。
また、多くのプロ野球球場が「盛土地・埋立地」に建設されている中で、明治神宮野球場の立地は地盤が安定しているのが特徴。そのため、液状化リスクは低く、洪水や津波の浸水想定区域にも含まれていません。
一見安全そうに思えますが、東京都心という場所柄、地震のリスクは無視できません。
研究によると、神宮球場のある新宿区は、今後30年以内に震度6弱以上の地震に見舞われる確率が「26%以上」とかなり高い水準にあります!
神宮球場の洪水のリスクもゼロではありません
研究では、各種ハザードマップを基に災害リスクが詳細に調査されました。
明治神宮野球場では、洪水による浸水深が0.1~0.5メートル程度と想定されています。これはプロ野球12球場の中では比較的軽微なレベルです。
例えば、MAZDA Zoom-Zoomスタジアムや阪神甲子園球場では0.5~3.0メートル、ナゴヤドームでも0.5~3.0メートルの浸水が想定されており、明治神宮野球場のリスクレベルは相対的に低いことが分かります。
神宮球場での災害時、どこに避難すればよいの?避難場所はどこにあるの?
「広域避難場所」という言葉は一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
広域避難場所とは、大規模火災などの際に避難者の安全を確保するために指定された場所で、一定の面積と安全性を備えた場所が選定されています。
明治神宮野球場は、周辺施設一帯が東京都の広域避難場所に指定されています。これは球場単体ではなく、神宮外苑エリア全体での指定となっており、災害時には一定の避難機能を果たすことが期待されています。
明治神宮野球場周辺がこの指定を受けていることは、来場者にとって安心材料の一つですね。
すべての球場は事前の情報提供が課題に
研究チームが2018年12月から2019年1月にかけて実施した現地調査では、球場周辺で災害リスクそのものを周知する情報が確認されなかったという報告があります。
これは神宮球場の観戦者に「災害リスクに関する事前の情報提供が十分でない」ということ。
これは神宮球場に限らず「どんなリスクがこの場所にあるのか」といった情報を明示している球場は少数派でした。
神宮球場の外周には「避難場所はこちら」といった案内板があるよ!
現地調査によると、神宮球場の外周には「避難場所はこちら」といった案内板があり、軟式球場などへ誘導する表示も設置されているそうです。
実際、球場内で災害が発生した場合に備え、スタッフは訓練を受けており、地震や火災に関するマニュアルも整備されています。
試合前のワクワク感や、試合後の喜び(か悲しみ)で胸がいっぱいで「避難場所はこちら」の看板を見た記憶がないです…。
観戦するちなヤクの私たち、そして相手チームのファンの皆さんも、「地震が起きたらどこに逃げるんだろう」という意識を持つ必要がありますね。
私たちファンにできること、それは「備える意識」を持つこと
・観戦前にハザードマップで周辺の避難場所を確認する
・非常時にはスタッフの指示に従い落ち着いて行動する
・災害が起きても混乱を避けるための意識を、応援と同じように持ち合わせる
また、神宮球場のような大規模施設が「一時避難場所」となり、そこに避難した時に自分は何ができるのか、何をすべきかを考えたいです。
支援物資が来た時、スムーズに受け取れるように列を誘導する、声がけをする…など、いまからイメージしていきたいものです。
神宮の安心も、チームの勝利も
スワローズの勝利を祈る気持ちと同じように、私たちの安全にも目を向けてみませんか?
野球は人生を豊かにしてくれます。でもその前提には「安全」がある。
神宮で笑って応援できるように、「もしも」の備えを今こそ。
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