東京ヤクルトスワローズの主砲・村上宗隆選手のメジャー挑戦が現実味を帯びる中、プロ野球ファンの間で「ポスティングシステム」という言葉を耳にする機会が増えています。2022年に令和初の三冠王に輝いた村神様が、いよいよ大リーグの舞台へ羽ばたこうとしているのです。
しかし、「ポスティングシステムって何?」「海外FAとどう違うの?」「球団はどれくらいの譲渡金を受け取れるの?」といった疑問をお持ちのスワローズファンも多いのではないでしょうか。
この記事では、ポスティングシステムの仕組みから海外FAとの違い、譲渡金の計算方法、さらには村上選手がメジャー移籍する場合の条件まで、分かりやすく解説します。愛する選手がメジャーで活躍する姿を見たいけれど、一方でスワローズから離れてしまう寂しさもある……。そんな複雑な想いを抱えるファンの皆様に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
ポスティングシステムとは?基本的な仕組みを解説
ポスティングシステムの定義
ポスティングシステムとは、海外FA権を持たない日本プロ野球(NPB)の選手が、メジャーリーグ(MLB)への移籍を実現するための制度です。1998年に日米間で締結された「日米間選手契約に関する協定」によって設立されました。
この制度の最大の特徴は、所属球団の承認が必須という点です。どんなに選手本人がメジャー挑戦を熱望しても、球団が認めなければ利用できません。イチロー選手、松坂大輔投手、ダルビッシュ有投手、大谷翔平選手など、多くの日本人スター選手がこの制度を利用してメジャーの舞台に立ってきました。
ポスティングシステムの流れ
現在のポスティングシステムは、以下のような手順で進められます。
- 選手が所属球団にポスティング利用を申請し、球団が承認 選手がメジャー挑戦の意思を示し、球団がこれを受け入れることから全てが始まります。
- 球団がNPBコミッショナーを通じてMLB機構に申請 申請期間は毎年11月1日から12月15日までと定められています。
- MLB機構が全30球団に公示 申請が受理されると、選手が獲得可能であることがMLB全球団に通知されます。
- 45日間の交渉期間 公示の翌日から45日間、選手は獲得を希望する全てのMLB球団と自由に契約交渉を行えます。かつては最高入札額を提示した1球団のみと交渉できましたが、2013年以降の制度改定で複数球団との交渉が可能になりました。
- 契約成立で譲渡金支払い 選手とMLB球団が契約に合意すると、そのMLB球団から日本の所属球団へ譲渡金が支払われます。
- 交渉不成立の場合は残留 45日間の交渉期間内に契約が成立しなかった場合、移籍は不成立となり、選手は日本球団に残留します。翌年のオフシーズンまで再度のポスティング申請はできません。
海外FAとポスティングシステムの違い
海外FA権とは
海外FA権(フリーエージェント権)は、選手が自らの意思で海外球団への移籍を決定できる権利です。NPBでは、1軍登録145日以上のシーズンが9年に達すると海外FA権を取得できます。
145日というのは、レギュラーシーズンの約8割に相当します。クライマックスシリーズの出場登録日数もカウントされるため、強豪チームに所属していればやや有利になります。高卒でプロ入りした選手なら最短27歳、大卒選手なら最短31歳での取得となります。
3つの決定的な違い
ポスティングと海外FAには、以下の3つの大きな違いがあります。
1. 球団の承認の有無
- ポスティング:球団の承認が必須
- 海外FA:選手が自らの意思で権利を行使可能
2. 譲渡金の支払い
- ポスティング:MLB球団から日本球団へ譲渡金が支払われる
- 海外FA:譲渡金は一切発生しない
3. 利用可能時期
- ポスティング:海外FA権取得前でも球団が認めれば利用可能
- 海外FA:9年の一軍登録という条件を満たす必要がある
この違いが、球団の判断に大きく影響します。多くの球団は、海外FA権取得の1〜2年前にポスティングを容認する傾向があります。なぜなら、海外FA権を行使されてしまうと、球団には1円も入ってこないからです。少しでも譲渡金を得られるうちに送り出そうという経営判断が働くのです。
譲渡金の仕組み:球団はどれくらい受け取れるのか
現在の譲渡金計算方法(2018年以降)
ポスティングシステムにおける譲渡金は、選手とMLB球団が結ぶ契約の総額に応じて変動する方式が採用されています。具体的な計算式は以下の通りです。
契約総額2,500万ドル以下の部分:20% 例:2,000万ドルの契約なら、2,000万ドル×20%=400万ドル
契約総額2,500万ドル超〜5,000万ドルの部分:17.5% 例:4,000万ドルの契約なら、2,500万ドル×20%+1,500万ドル×17.5%=762.5万ドル
契約総額5,000万ドル超の部分:15% 例:1億ドルの契約なら、2,500万ドル×20%+2,500万ドル×17.5%+5,000万ドル×15%=1,687.5万ドル
さらに、契約期間中に選手が追加で得た金額(出来高、契約延長オプション行使分の年俸など)の15%も譲渡金に加算されます。
過去の制度変遷
ポスティングシステムの譲渡金制度は、時代とともに大きく変化してきました。
1998年〜2012年:封印入札方式 MLB球団が非公開で入札し、最高額を提示した球団が独占交渉権を獲得する方式でした。松坂大輔投手には約5,111万ドル、ダルビッシュ有投手には約5,170万ドルという巨額の入札金が提示され、話題となりました。
2013年〜2017年:固定上限方式 NPB球団が譲渡金の上限を2,000万ドルと設定し、支払う意思のある全球団が交渉できる制度となりました。田中将大投手や大谷翔平選手はこの制度で移籍しています。
2018年以降:変動方式 現在の契約総額に応じて譲渡金が変動する方式に移行しました。2023年オフにドジャースと12年3億7,000万ドルの超大型契約を結んだ山本由伸投手の場合、ヤクルトスワローズと同じセ・リーグのオリックスには約5,062万ドル(当時のレートで約70億円以上)の譲渡金が支払われました。
村上宗隆選手のメジャー挑戦:何年目から可能?
村上選手のキャリアと権利取得時期
村上宗隆選手は2017年のドラフト会議で、清宮幸太郎選手(日本ハム)を外したヤクルト、巨人、楽天の3球団が競合し、抽選の末にヤクルトが交渉権を獲得しました。九州学院高校からの高卒入団です。
海外FA権は「1軍登録145日以上のシーズンが9年」で取得できますので、村上選手が毎年フルシーズン一軍に在籍し続けた場合、2026年オフ(2027年シーズン前)に海外FA権を取得することになります。
しかし、2025年シーズン終了時点では、まだ海外FA権を取得していません。つまり、2025年オフにメジャー移籍を実現するには、ポスティングシステムを利用する必要があるのです。
ヤクルト球団の姿勢
報道によると、ヤクルトの林田哲哉球団社長は2025年6月に「ポスティングで海外に行きたいということをもし言ったならば、申請はしてあげようと思う」と村上選手のメジャー挑戦を容認する姿勢を示しています。
2022年オフに村上選手は3年総額18億円という大型契約を結びましたが、2025年シーズンがその契約最終年となります。村上選手自身も2024年12月の契約更改交渉後に「(2025年が)日本でやる最後のシーズンになると思う」とメジャー挑戦を明言しており、2025年オフのポスティング移籍が現実味を帯びています。
村上選手の市場価値
米メディアでは、村上選手に対して総額2億ドル(約300億円)を超える大型契約の可能性が報じられています。2022年の三冠王獲得時には56本塁打を放ち、王貞治氏の記録を更新しました。WBCでの打球速度は約185.4km/hを記録し、「メジャーリーグでもトップクラスに匹敵」と評価されています。
もし村上選手が2億ドル規模の契約を結んだ場合、ヤクルトが受け取る譲渡金は概算で以下のようになります。
2,500万ドル×20%+2,500万ドル×17.5%+1億5,000万ドル×15%=2,687.5万ドル(約40億円前後)
これは球団にとって大きな収入となり、新戦力の獲得資金として活用できます。
25歳ルールとマイナー契約の制約
ポスティングシステムを理解する上で、もう一つ重要なのが「25歳ルール」です。
MLBの労使協定では、25歳未満かつ海外プロリーグでの所属年数が6年未満の選手は、マイナー契約しか結べないという規定があります。契約金も各球団に定められた国際ボーナスプールの枠内に制限されます。
村上選手は2000年2月2日生まれで、2025年オフの時点で25歳です。プロ入りから8年目となるため、この25歳ルールには該当せず、メジャー契約を結ぶことができます。
逆に、より若い時期にメジャー挑戦を希望する選手の場合、25歳未満だとマイナー契約となり、譲渡金も大幅に少なくなってしまいます。これが、NPB球団が若手選手のポスティングを認めにくい理由の一つでもあります。
スワローズファンとして知っておきたいこと
球団が選べる権利
ポスティング申請後、選手は獲得を希望する全てのMLB球団と交渉できます。つまり、選手自身が移籍先の球団を選べるのです。
これは海外FAと同様の権利で、現在のポスティングシステムでは「申請後の選手は実質インターナショナルFA選手に等しい」と言われています。球団の承認が必要なのはポスティング申請までで、その後の交渉や契約については選手側が主導権を握ります。
歴代スワローズ選手のポスティング利用
過去にヤクルトスワローズからポスティングシステムでメジャーに挑戦した選手には、岩村明憲選手(2006年オフにデビルレイズへ)がいます。岩村選手は3年連続で打率3割30本塁打以上を記録し、野手としてはスワローズ初のポスティング移籍となりました。
村上選手が2025年オフにポスティングでメジャー移籍を果たせば、岩村選手以来、約19年ぶりのスワローズからのポスティング移籍となります。
ファンとしての複雑な想い
愛する選手のメジャー挑戦は、ファンにとって誇らしくもあり、寂しくもあります。しかし、ポスティングシステムを利用することで、ヤクルト球団には譲渡金が入り、それが新たな戦力補強の資金となります。
また、村上選手がメジャーで活躍する姿を見ることは、スワローズファンにとっても大きな喜びとなるはずです。WBCでの活躍を思い出してください。日の丸を背負った村上選手が、今度はメジャーの舞台で世界最高峰の投手たちと対決する――それもまた、私たちスワローズファンの誇りとなるのではないでしょうか。
まとめ:ポスティングシステムの要点
最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
ポスティングシステムの特徴
- 海外FA権を持たない選手がメジャー移籍する制度
- 所属球団の承認が必須
- MLB球団から日本球団へ譲渡金が支払われる
- 申請期間は11月1日〜12月15日、交渉期間は45日間
海外FAとの違い
- ポスティングは球団承認が必要、海外FAは選手の権利行使のみ
- ポスティングは譲渡金あり、海外FAは譲渡金なし
- 海外FA権取得には1軍登録145日×9年が必要
譲渡金の計算方法(2018年以降)
- 契約総額2,500万ドル以下:20%
- 2,500万ドル超〜5,000万ドル:17.5%
- 5,000万ドル超:15%
- 出来高も15%が加算
村上宗隆選手の場合
- 2017年ドラフト高卒入団で2025年で8年目
- 海外FA権取得は2026年オフ(9年目終了後)
- 2025年オフのメジャー挑戦にはポスティングが必要
- ヤクルト球団はポスティングを容認する姿勢
ポスティングシステムは、選手の夢の実現と球団経営のバランスを取る重要な制度です。村上宗隆選手のメジャー挑戦が実現すれば、私たちスワローズファンは世界最高峰の舞台で戦う村神様を応援できる喜びと、神宮球場でその雄姿を見られなくなる寂しさの両方を味わうことになるでしょう。
しかし、それもまた野球ファンとしての醍醐味です。村上選手がどのような決断を下すにせよ、私たちスワローズファンは最大限のエールを送りたいものです。そして、メジャーの舞台で大活躍する村神様の姿を、誇らしい気持ちで見守りましょう!

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